あの日、君と僕は


ついに六時間目が終わり、終礼をする頃。

あれだけ降っていた雨もやっと止んだ。

グラウンドはまだ雨水でぐちゃぐちゃだけど、街では道路を車が走っているのがちらほら見える。

しかし、柚葉の気持ちはまだ晴れることはなかった。

彼女たちのことばかりが頭に浮かんでは消えていく。

しかし、今週は掃除当番なので、部活には少し遅れていくことになる。

この学校では、掃除は放課後に行われるのだ。

教室の隅にあったゴミやホコリを取り出して後ろに箒ではく。

しかし柚葉は、角にあったなかなか取れない紙切れに苦戦していた。

柚葉は何気なく窓の外を見た。

掃除の時間は窓が開いていて、外の景色がよく見える。

空には少しばかり晴れ間が出ていた。
しかし、また雨は降りだしていた。

ということは……

「虹だ」

誰にも聞こえないよう、呟いた。

大空には、薄いながらも虹がかかっていた。

まだこの教室の中ではこれに気がついている人はいない。

クラスで一番最初に見つけたので、自分だけの特別なもののように感じられる。

そんなちっぽけなことでも、少し嬉しかった。

「ねー相川さん、ちゃんと掃除してよ」

振り向くと、サックスの一人、舌打ちした方がいた。

「……うん。」

「ったく」

そうか、この人も掃除当番なんだ、と今になって気がついた。

「ほんと、迷惑なんだからぼさっとしないでよ」

——迷惑。

その単語がまた、しばらく頭から離れてくれなかった。