あの日、君と僕は

鞄は棚に入れられなかったので仕方なく、机の横に置いておいた。

パラパラという雨が窓に当たる音が窓越しからもよく聞こえてくる。

担任による朝礼が始まる。

普段は今日一日の連絡をいうだけだが、今日もいつもと同じようなことを言うだけだった。

その言葉を聞き流すべく、窓の外を見た。

後ろの席なので、先生にはばれない。

雨は未だに降り続いていて、グラウンドを雨水で濡らしている。

そのグラウンドは雨水で川のようになっていて、今あそこに足を踏み入れたら泥だらけになってしまうんだろうなと思った。

グラウンドの向こうに見える街は雨雲のせいか、どこか雲と同じ灰色を帯びていた。

もし本当に雨で街が沈んでしまったらどうなるんだろうな、と思った。

そうなるともう、同じ毎日にはいられない。

今でさえも『部活をやめてしまえ』などと言われるほど今までの毎日とは違うのに、この学校が水で溺れてしまったら。

きっと、もうフルートは吹けなくなる。

直感的に浮かんだ答えは、絶対にあって欲しくない、悪夢のようなものだった。

朝礼が終わるまではそう時間はかからない。

少なくとも五分で終わってしまう。

その五分があれば音楽が聴ける。

そんなことを考えながら鞄を決められた棚に入れ、一時間目の準備をした。

相変わらず、雨は降り続いていた。