あの日、君と僕は

中学生になって、お祝いに買ってもらったそれは、まだ綺麗なまま保たれている。

手に取ったスマホを迷いなく操作し、動画アプリを起動させる。

佳純でもきっと知らない吹奏楽の曲。

自分のものではないけれど、特別な曲だと思う。

フルートソロが綺麗で、各楽器の旋律が美しい。手の中にあるこの小さな端末から、壮大な曲が流れ始めた。

また、カーテンがふわりと風に乗って膨らんだ。


始めのクラリネット。
低音だが、しっかりと耳に入ってくる。
だんだんと木管楽器の数が増えていき、最終的には金管楽器、パーカッションが入り主題に入る。

作曲者はどんな意図を持ってこの曲を作ったのだろう。
そんなことさえも思ってしまう。

柚葉はこの部分が一番好きだった。

徐々に膨らんでいく音の層が。

そこから紡がれる壮大な、美しい旋律が。

曲を言葉で説明するのは難しい。
だから、一度聞かないとわからない。

音楽が好きな柚葉にとって、どの部活の中でも一番頻度が高く音に触れることができるのは吹奏楽部の特権であると思っている。

音に触れる機会が多いと、自然と音を聞く機会も多くなる。よって、曲の良さによく気がつくことができるのは自分たちなのだ。