あの日、君と僕は

あの舌打ちは一体……?

柚葉に向けられたのだろうか。

苛立ちが彼女をそうさせたのか、または他の誰かに向けたのか。
それさえもわからない。

もし、あれは自分に向けられたものなのだとしたら。

関係のないことだといって考えることを放棄するほうが難しいかもしれない。

いくら人を避けているとはいえ、彼女の行動は柚葉にとって傷つくものだった。

だが、考えたって答えは出ないのはいつもと同じだった。


これが、柚葉の毎日が崩れる始まりだった。

………

「ほんと、あの人って何考えてんだろうね。」

「ほんとそう!」

「今の部活の雰囲気とか分かってんのか!?って感じなんだけど」

今日の練習が終わった後。

サックスパートの一人、柚葉に舌打ちした彼女はミーティングの時の柚葉に向けて愚痴っていた。

当然、本人はもう帰宅している。

サックスとトランペットの二人は家の方向が違うので、いつも校門の前で少し喋ってから帰宅するようになっていた。

「気づいてないんじゃないの?だって、三年が抜けてからあたしたち、だいぶ雰囲気緩くしてんもん。」

「まぁ、そうだよねー。あの雰囲気の中で一人だけ本気とか超ウケるんだけど。」

「それな過ぎ」

二人は嘲笑った。

もう帰宅しているだろう柚葉に向かって。

あの舌打ちは、当然ながら柚葉に向けての行動だった。

「ほんと、鼻につくわぁ」

「ふふ、だね。いっそのこと、部活やめてしまえばいいのに。」

「……やめさせる?」

まじ?とサックスが答えた。

「二人、じゃなくてもいいけどいじめてやってさ。そしたら向こうもやめてくれるでしょ。」