さく、さく、さく——

秋の日の朝。
空気はひんやりとしていて、早くも冬の気配を感じさせる十一月。

相川柚葉は、朝練習に行く為、早朝から学校へ向かっていた。

さく、さく、さく——

道路に落ちた枯葉を踏みつけると、さく、さく、と音がする。案外気持ちがいいのだ。

そんな足取りでもうじき見えてくる校門へ向かう。

いざ校門へ着いてみても、誰一人、人はいなかった。いつものことだ。

迷いのない足取りで下足室へ行き、スニーカーから学校指定の上履きに履き替える。

一年生のときからずっと使い続けたからか、汚れで黒くなっている部分があるが、構いなく履き替え、代わりにスニーカーを自分専用—と言えば聞こえのいい—の棚へと入れる。

下足室から出た柚葉は、二階へ上がり、渡り廊下を通る。空気がひんやりとしていた。

職員室に行って、吹奏楽部、と丁寧にもプレートに書かれた鍵を借りる。

鍵を握り、四階へと上がる。

入部当初は息を切らすほどだったが、あれから一年経つとだいぶ慣れた。


部室へとつながる廊下を歩く。カバンを丁寧に廊下の端に置き、鍵—南京錠—を開ける。

南京錠の底に鍵を挿し、回すといとも簡単に施錠を解除できる。

「おはようございます」

部室に入ると、まず誰もいなくとも挨拶は必ずしなければならないのがこの中学校吹奏楽部の決まりだ。

この学校の吹奏楽部は礼儀やマナーを守るのが鉄則となっている。