あの日、君と僕は

「はい、ではあまり本番まで時間がないので早速していきたいと思います。まず、個人の目標から、どんなことでもいいので考えてください。三分たったら言っていってください」

個人の、目標…

やっぱり、上手くなりたい。自分の気持ちを、自分の音で伝えたい。
でもそれを人前で言うのは恥ずかしい。

どうしようか、と悩んでいるうちに三分を過ぎてしまった。

ここからは挙手制で、自分が言いたいときに言う。でもいつかは今なければならないので、時間はあまりかからなかった。

とうとう、柚葉の目標が決まった。

「私は、音色とか、音量とか、そういうの全部まとめて……現役で一番上手くなりたいです。」

これが、悩んだ末の結果だった。

現役で一番上手くなる?
そんな無茶な、と誰かが言った気がした。

その後も順調に進んで、学年の目標を決めることになり、傍観ではないがあまり発言しないで居座っているとようやく決まった。

「では、ここで終わりにしておきます。これから一切、この目標に対して不満を言わないこと。自分たちが決めたことなので、これだけは守ってください。」

はい、と言う返事がまた部室に響いた。