あの日、君と僕は

………

放課後、あいにく蓮実について美羽に聞くことはできなかった。合奏があったのだ。

「昨日の合奏で言ったこと、改善できなかったら上手くはなりません。重要なことはしっかり楽譜にメモするように。あと、トランペット音汚いわ。もっと綺麗に、音のイメージして」

「はい!」

トランペットパートが返事をする。

部外の人からは何事か、と思われるが吹奏楽部としては当たり前。

最初からもう一回、と顧問が指示を出すと、今度は全員から返事が返ってくる。

「1、2、」

練習しているのは文化祭で演奏する曲だ。
誰もが聞いたことのあるフレーズは、色々な演奏会でも演奏される。

アップテンポでノリの良い曲だが、奏者としては大変で、音色の良し悪し、間の取り方などたくさんのことに気を使わなくてはならない。

顧問が演奏を中断させる。

「もっとリズムに乗って。リズム感感じないとお客さんも何吹いてるのかわからんくなるで。」

顧問もまた、たまに関西弁になる時がある。

「もう一回、Bから」

「はい!」

練習番号Bからまた合奏が始まる。

この繰り返しで、良い演奏にしていくのだ。

本番まであと数週間、限られた時間は迫ってきている。