「……お兄!!!」
厳粛に執り行われる式の最中、あたりに響く大きな声。
振り乱れた髪も厭わぬ様子、群衆を掻き分けて 柵の手前へ躍り出た。
「ねぇ、お兄!待って!まだ いかないで!」
肩で息をするその姿。
無視をするわけにはいかなかった。
周りからの制止の声には耳を傾けず、掴まれた手を振り払い、妹の元へ一直線に向かう。
「わざわざ駆けつけてくれたんだね、すまない。」
「これがさいごだから……」
「あぁ、さいごだね。」
柵越しに手を合わせる。
「私はもういくよ。ふさ、目を閉じて 耳を塞いでおきなさい。」
見上げた空は底抜けに青く澄み渡っていて、私の赤など簡単に かき消されてしまいそうだ。