二階の御座敷に連れ立って、12畳の畳の真ん中に膝を突き合わせる。
きっと舞わずの舞妓の事で怒られるんだ。菊丸さん姉さんの怪談顔が脳裏に浮かぶ。
「おしょさんには怒られたん?」
「へ?」
お叱り一番だと思っていたので拍子抜けした。
「今日は怒られてしまへんどした。あ、でも、舞わずの舞妓にはもったいないって」
「そうか、あんたはほんまに親子揃って心配かけることばっかりやわ」
そう言って、おかあさんはため息を吐いた。
おかあさんは割腹が良いので着物もよく似合う。
歳は実の母よりももう少し上からと言ったところであった。置屋の玄関にはおかあさんの若い頃の写真付きの日本酒が飾られているが、
同一人物とは思えない!というのが掴みどころである。
「来月の末に、店出しするし、来週は舞の試験が決まったし、裾引きの採寸もあるし、忙しなるえ」
本当だったんだ。なごみはいきなり忙しくなる事に目眩がした。

