「あんたいつ店出しすんねや?」
「わからしまへんけど、もしかしたらもうすぐするかもしれへんのどす」
店出しとは、舞妓デビューの事。
置屋のおかあさんからハッキリ聞いた訳ではないので、少し濁した。
この街はすぐになんでも話しが回るので、気をつけないといけない。
「それはおめでとうさん、姉さんは誰になんのやろうなあ、あんたんとこは、丸筋か?」
「そうどすおかあさん」
舞妓はOJT制度が存在する。
デビューすると置屋だったり、家の筋の姉さんと姉妹関係を結んで、店出しの面倒を見てくれる。
筋と言うのは、家計と言うのが近いか。
なごみの置屋はおかあさんが丸筋で、代々源氏名には「丸」という文字が入る。
菊丸もそうだ。
花街は筋で構成されていて、置屋事というよりは、その筋で助け合って生きていた。
もちろん筋も関係なく、みんなで助けあっているのは前提で。

