なごみは舞のお稽古があまり好きではなく、どちらかと言えば鳴物のお稽古の方が力を入れられていた。
鳴物のお師匠さんは女の人ではなく、優しいハゲのおじいちゃんで、話し方がとても穏やかだった。
鼓を打てば、褒められて、
太鼓を叩けば、拍手された。
「千代丸に似て才能があるわい」
お師匠さんはいつもそう言っていた。
「おしょさん、うち、鳴物がしたい。舞は苦手どす。うち舞わずの舞妓になる」
失言だった。
その日の鳴物の稽古場はいつもと違って舞の稽古場の隣だった。
言った瞬間口を閉じたが、しばらくするとスーッと襖が開いて冷ややかな表情を浮かべた舞のお師匠さんがなごみを睨んだ。
「誰え?舞わずの舞妓は?ええ度胸やわ。舞のお稽古がうるさくて出来ひんしもうちょっと声のトーン落としてもらえますやろか」
京女独特の声色で、なごみの背筋は凍った。
この仕返し、いや、罰やわ。今私は罰を受けているんやわ。
なごみは自分の失言を思い返して宮山音読を笑顔で踊りきった。

