カタカタと部屋にキーボードを打ち込む音が響く。その音を聞くのが好きで、雨宮楓(あめみやかえで)は仕事の手を止めてパソコンにずっと向かい合っている男性の後ろ姿を見つめた。

「……何?そんなに見つめられると仕事がしにくい」

何分見つめていたのか、男性が苦笑しながら振り返る。楓は「ご、ごめんなさい!」と言い赤い顔を誤魔化すように手元にある紙と向かい合った。紙には鎧を身につけたかっこいい男性や、レースのついた衣装を着た魔女が描かれている。

楓はイラストレーターの仕事をしている。かなり人気のイラストレーターで、今は小説の挿絵を描いている。

「三住先生、このような感じでいいですか?」

楓が描き終えた絵を男性ーーー三住翔太(みすみしょうた)に見せると、翔太は目を輝かせる。

「おお!さすが楓!でもさ今は担当の人もいないわけだし、そんな他人行儀にならなくてもいいんじゃない?」

そう翔太が言ってくれて、本当は楓も嬉しかった。楓と翔太は幼なじみなのだから。