なんとか1日の練習を終えて、皆は帰っていく。

私は用具の点検をしたり、部室の掃除をしたりしていた。

やることが多くて、時間だけがあっという間に過ぎていた。

気づけば外は真っ暗闇だった。

時々身震いしそうに怖くなる。暗いのは少し苦手なんだよね。

着替えて、帰り支度を整えた私は鞄を持って部室から出た。

部室の戸締まりも終えて。

グラウンドに出ると、人影が見える。

「お疲れ様」といきなり声をかけられて思わず体がビクッとなってしまった。

けど…すぐにわかった。大好きな先輩の声だって。

「いつも俺らの為に遅くまでありがとな。ちゃんと見てるからな。俺らの管理、記録取ったり、分析したり。掃除したり、洗濯まで…その他のサポートに声かけ、アドバイスまで…ちゃんと…皆ホントに感謝してるから」と春馬先輩は言う。

「ありがとうございます」と私は言った。

「さ、送るよ。帰ろうか」と春馬先輩に言われて、私は頷いて、春馬先輩の横を並んで歩いた。

「…なぁ、辛くないか?一緒に練習出来ないの…」と春馬先輩は言う。

「…そう思いますか?…私、決めたんです。先輩の目指す甲子園と言う夢、応援しようって。邪魔しちゃダメだって…だから…甲子園絶対行ってくださいね?」と私が言うと、

「本当、敵わないなぁ。樹には…。あのさ、甲子園まであんまり時間無いけどさ、無事行けたらさ、樹の気持ちと真剣に向き合おうと思ってる。だから…もう少し答えは待っててくれるか?」と春馬先輩は言う。

私はその言葉がスゴく嬉しかった。

「…はい!」と一言言った。

「…こんなことは言いたくないんだが…もし、誰かケガして人数足りなくなったら代わりに試合出てくれるか?」と春馬先輩は言い出した。

「もちろんですよ。そうなれば全力で…」と私は言った。

私もこればかりは本気だ、叶うなら私だって甲子園と言う夢舞台のマウンドに上がりたい!ずっとそう思ってきた。

けど…前例が無く、女子は出られないんだろうから、と思って諦めてきた。

だから、春馬先輩に甲子園連れていってもらおうって。


私は家まで送って貰った。

中に入って、夕食を取ると、服を着替えて家を出る。

野球の練習をするために。


私のお兄ちゃんがいつも練習してる社会人野球チームがある。

私はそのチームで一緒に練習させて貰ってる。

もちろん、私の保護者としてお兄ちゃんは同伴で、いつも私の練習に付き合ってくれる。