名門と言われるだけあって、練習はかなりハードで、辞めていく人も多くいる。

そして、いつもメンバーはギリギリの人数しか居なくて、ケガをしても練習を続ける人も少なくない。

今日も私は、1年生のマネージャーと一緒に皆に、タオルを配ったり、水を渡したりと忙しくしていた。

けど。やっぱり皆の練習見てると混ざりたくて体がウズウズしてくる。

でも、ダメだ…

私、先輩の邪魔はしないって決めたんだもん。

先輩は努力家で誰よりも練習し、実力で副主将になったエースピッチャー。

私には誰よりも輝いて見えた。

先輩にとって最後の大会だもん…。

最後くらい、甲子園行って欲しい。

私はそうも思ってできる限りのことはしてきたつもりだった。

休憩のとき、春馬先輩は私に声をかけてくれた。

「いつもありがとう」って。

私はそれだけでスゴく嬉しくて…にやけてしまう。

照れてるのを隠すためうつむいたら、頭を優しくぽんぽんされた。

私はその行為に驚いて、思わず顔を勢いよくあげると、

びっくりしたような顔をしながらも、爽やかな笑顔で私を見てくれている春馬先輩…

その事にまた、私は顔を赤くした。

その時、「おーい!お前ら、いちゃついてんじゃねーぞ!」と主将から声が飛び、

「いちゃついてねぇ!」と春馬先輩は練習に戻っていった。

そんな春馬先輩を私はずっと見つめていた。

そしたらそこに、「仲いいんですね!もしかして…付き合ってたりして…」と後輩マネージャーが現れた。

「…まだ…付き合って無いんだ…私の片思い。中学の時、一回告白してるんだけどね…振られたんだ。でも、諦められなくて追って来ちゃったの。振られた理由がね…

『今は野球にしか興味ないからごめん』だったんだよね。甲子園が夢だって言ってたから…。だからね、私春馬先輩が甲子園行けるように出来ることはなんでもしようって決めてマネージャーなったの」と私は正直に自分の気持ちを打ち明けた。

「そうなんですねぇ~素敵です!私応援してます。私は羨ましいです。先輩みたいにもっと要領よく仕事出来たらいいんですけどね」と言う後輩に

照れながら、「こんなもの、慣れだよ。私は、1番近くで先輩のこと応援したくてマネージャーなったんだから…」と私が言うと、後輩は嬉しそうに笑った。