「おはようございます。カルミアさん」
爽やかな朝の挨拶だ。
それに伴う穏やかな微笑みを目にした瞬間、カルミアは素早く扉を閉じた。
正確には閉じようとしたのだが、リシャールの手によって阻止された。カルミア以上の目にも止まらない早さで押さえられて動かすことができない。手際よく隙間に足まで差し込まれた。
(見られたぁぁぁぁぁ!!)
カルミアはパニックに陥った。
「なっ、なん、どうして!?」
「カルミアさんに会いに来ました」
「わかりましたから、一度閉めさせてもらえますか!?」
「何故です?」
カルミアは動揺しているが、リシャールは平然と答えている。
理由はもちろんこの格好を見られたくないからだ。学生でもないのに制服を着てはしゃいでいたなんて知られたくない。
「すぐ戻りますから、一度閉めましょう!?」
「お手を煩わせるつもりはありません。そのままで結構です。というより、その姿を見に来たのですが」
(私がコスプレしてたってばれてる!? なんで、どうして!?)
どうあっても力で勝てないカルミアは諦めた。強風で吹き飛ばすとう手段もあったけれど、休日の朝から騒ぎを起こして迷惑をかけたくはない。
「と、とにかく入ってください!」
恥ずかしいけれど目撃者が増えるよりましだ。
被害が拡大する前にカルミアは先手を取った。
「出来心だったんです! どうしてもアレクシーネの制服が着てみたくて、レインがなんでも言ってというから弱みにつけ込むような真似を!」
「落ち着いてください」
リシャールのどこまでも優しい眼差しが逆に痛い。
「でも呆れましたよね!?」
「確かに驚きはしましたが、これがレインさんの言っていた、見せたいものということでしょうか」
「え?」
「レインさん。このたびはお声がけいただきありがとうございます」
「え?」
リシャールが自分を通り越して部屋の奥にいるレインに声をかけている。
カルミアもつられて振り返ると、いつの間にかレインはお茶を飲み終えていて、手際よく帰り支度を終えていた。
「レイン?」
縋るような眼差しを向けると、部屋に入った時に感じた頼りなさは消えていた。
「私、校長先生にも謝りに行ったの。校長先生も罪滅ぼしはいらないと言うから、せめて喜ぶものを見せてあげられたらと思って」
友達だと思っていた相手に裏切られたカルミアはうなだれる。
「あの、私帰るから。あとは二人でゆっくりして!」
「え、ちょっと」
「紅茶、ごちそうさま。とても美味しかったから、一緒にカフェに行ける日が楽しみ!」
レインは狼狽えるカルミアの横をすり抜ける。
取り残されたカルミアは行く場のない感情に立ち尽くしてしまった。
「レインさんには感謝しなければいけませんね」
隣から楽しそうな声がする。おまけに熱い視線を感じる。
「とてもよくお似合いですよ」
当然だ。ゲームではカルミアも着ていたのだから。
「そうしていると、カルミアさんがアレクシーネの生徒になるという未来もあったのかもしれませんね」
想像したことがないとは言わない。きっとそれも楽しかったとカルミアは思う。
けれど何度選択肢を与えられても自分の答えは変わらない。
「でも私は今の生き方を気に入っていますから。これが一番私らしいので」
制服を着て楽しむくらいでちょうどいいのだ。
「さすがカルミアさんです。今日も格好いいですね」
「なっ!?」
想いが通じ合ってからというもの、リシャールの言葉は熱烈だ。目が合えば微笑まれ、一緒にいれば手を繋ぐ。どれも本心から向けられた言葉だと知ってからは、仕事一筋で生きてきた身には刺激が強い。
居心地の悪さを覚えたカルミアは、着替えるので外で待っていてほしいと告げる。するとリシャールは目を丸くした。
「私はその格好でも構いませんが」
「私が構うんです!」
声を荒げながらもカルミアはレインがくれた幸せな休日の始まりに感謝した。
爽やかな朝の挨拶だ。
それに伴う穏やかな微笑みを目にした瞬間、カルミアは素早く扉を閉じた。
正確には閉じようとしたのだが、リシャールの手によって阻止された。カルミア以上の目にも止まらない早さで押さえられて動かすことができない。手際よく隙間に足まで差し込まれた。
(見られたぁぁぁぁぁ!!)
カルミアはパニックに陥った。
「なっ、なん、どうして!?」
「カルミアさんに会いに来ました」
「わかりましたから、一度閉めさせてもらえますか!?」
「何故です?」
カルミアは動揺しているが、リシャールは平然と答えている。
理由はもちろんこの格好を見られたくないからだ。学生でもないのに制服を着てはしゃいでいたなんて知られたくない。
「すぐ戻りますから、一度閉めましょう!?」
「お手を煩わせるつもりはありません。そのままで結構です。というより、その姿を見に来たのですが」
(私がコスプレしてたってばれてる!? なんで、どうして!?)
どうあっても力で勝てないカルミアは諦めた。強風で吹き飛ばすとう手段もあったけれど、休日の朝から騒ぎを起こして迷惑をかけたくはない。
「と、とにかく入ってください!」
恥ずかしいけれど目撃者が増えるよりましだ。
被害が拡大する前にカルミアは先手を取った。
「出来心だったんです! どうしてもアレクシーネの制服が着てみたくて、レインがなんでも言ってというから弱みにつけ込むような真似を!」
「落ち着いてください」
リシャールのどこまでも優しい眼差しが逆に痛い。
「でも呆れましたよね!?」
「確かに驚きはしましたが、これがレインさんの言っていた、見せたいものということでしょうか」
「え?」
「レインさん。このたびはお声がけいただきありがとうございます」
「え?」
リシャールが自分を通り越して部屋の奥にいるレインに声をかけている。
カルミアもつられて振り返ると、いつの間にかレインはお茶を飲み終えていて、手際よく帰り支度を終えていた。
「レイン?」
縋るような眼差しを向けると、部屋に入った時に感じた頼りなさは消えていた。
「私、校長先生にも謝りに行ったの。校長先生も罪滅ぼしはいらないと言うから、せめて喜ぶものを見せてあげられたらと思って」
友達だと思っていた相手に裏切られたカルミアはうなだれる。
「あの、私帰るから。あとは二人でゆっくりして!」
「え、ちょっと」
「紅茶、ごちそうさま。とても美味しかったから、一緒にカフェに行ける日が楽しみ!」
レインは狼狽えるカルミアの横をすり抜ける。
取り残されたカルミアは行く場のない感情に立ち尽くしてしまった。
「レインさんには感謝しなければいけませんね」
隣から楽しそうな声がする。おまけに熱い視線を感じる。
「とてもよくお似合いですよ」
当然だ。ゲームではカルミアも着ていたのだから。
「そうしていると、カルミアさんがアレクシーネの生徒になるという未来もあったのかもしれませんね」
想像したことがないとは言わない。きっとそれも楽しかったとカルミアは思う。
けれど何度選択肢を与えられても自分の答えは変わらない。
「でも私は今の生き方を気に入っていますから。これが一番私らしいので」
制服を着て楽しむくらいでちょうどいいのだ。
「さすがカルミアさんです。今日も格好いいですね」
「なっ!?」
想いが通じ合ってからというもの、リシャールの言葉は熱烈だ。目が合えば微笑まれ、一緒にいれば手を繋ぐ。どれも本心から向けられた言葉だと知ってからは、仕事一筋で生きてきた身には刺激が強い。
居心地の悪さを覚えたカルミアは、着替えるので外で待っていてほしいと告げる。するとリシャールは目を丸くした。
「私はその格好でも構いませんが」
「私が構うんです!」
声を荒げながらもカルミアはレインがくれた幸せな休日の始まりに感謝した。


