少年に料理を食べさせ、美味しいと言わせてしまったことはしっかりと覚えているが、幼い頃の話であり、それまでの経緯は薄れてきている部分もある。しかしリシャールの話を聞いたことでカルミアはあの時のことを鮮明に思い出していた。
「だ、だって、本当にそう思ったんですよ!?」
「はい。純粋な貴女の眼差しに、私はすっかり毒気を抜かれてしまいました」
(満面の笑顔で言われても、言ってることの物騒さは変わらないですからね!?)
「私にとってあの時出会えた少女は恩人です。彼女の優しさに応えたい、彼女の行いに恥じない自分になりたい一心で足を洗いました。いつかもう一度会えることを願って」
「もう一度会えたら、どうするつもりだったんですか?」
こうして出会えているはずが、特にリシャールから何かを求められた覚えがない。彼の本当の望みがどこにあるのか、知りたいと思ってしまう。
「カルミアさんにとっては覚えのないことかもしれませんが、私はカルミアさんとの出会いで救われました。貴女のおかげで自分は変われたのだと、私のことを見てほしかったのです。幸い私はアレクシーネの校長に就任しておりましたので、多少は誇れる職にもついていましたから」
いやいやと、カルミアは力強く否定する。多少どころではなく全魔法使いたちの憧れであり、魔法大国の象徴たる役職だ。それを多少と評価するのはリシャールくらいのものだろう。
「気付けば私は名も知らぬ少女に立派になった姿を見せたいと、そんなどうしようもない見栄のためだけにアレクシーネの校長という地位を手に入れていました」
懐かしむように語るリシャールに、またもカルミアはいやいやと待ったをかけていた。
「まさか、私に見てほしいって、それだけのためにアレクシーネの校長になったんですか!? 本当に!?」
というより、なれたんですかと言いたい。なろうと思ってなれるような職業ではないのだ。
「だ、だって、本当にそう思ったんですよ!?」
「はい。純粋な貴女の眼差しに、私はすっかり毒気を抜かれてしまいました」
(満面の笑顔で言われても、言ってることの物騒さは変わらないですからね!?)
「私にとってあの時出会えた少女は恩人です。彼女の優しさに応えたい、彼女の行いに恥じない自分になりたい一心で足を洗いました。いつかもう一度会えることを願って」
「もう一度会えたら、どうするつもりだったんですか?」
こうして出会えているはずが、特にリシャールから何かを求められた覚えがない。彼の本当の望みがどこにあるのか、知りたいと思ってしまう。
「カルミアさんにとっては覚えのないことかもしれませんが、私はカルミアさんとの出会いで救われました。貴女のおかげで自分は変われたのだと、私のことを見てほしかったのです。幸い私はアレクシーネの校長に就任しておりましたので、多少は誇れる職にもついていましたから」
いやいやと、カルミアは力強く否定する。多少どころではなく全魔法使いたちの憧れであり、魔法大国の象徴たる役職だ。それを多少と評価するのはリシャールくらいのものだろう。
「気付けば私は名も知らぬ少女に立派になった姿を見せたいと、そんなどうしようもない見栄のためだけにアレクシーネの校長という地位を手に入れていました」
懐かしむように語るリシャールに、またもカルミアはいやいやと待ったをかけていた。
「まさか、私に見てほしいって、それだけのためにアレクシーネの校長になったんですか!? 本当に!?」
というより、なれたんですかと言いたい。なろうと思ってなれるような職業ではないのだ。


