「じゃ、張り切ってきますかね。お嬢、しっかり見張っときますんで、大盛お願いしますよ!」
カルミアの葛藤など知らず、リデロは上機嫌だ。まだメニューすら決まっていないのに、大好物が約束されているような喜びである。
見張り台に向かって小さくなる背中を見ていると、言いたいことは色々あるが、喜ばせてあげたいと思わずにはいられなかった。
「ではリシャールさん。私は昼食の支度がありますので、ここで失礼させていただきますね」
「カルミアさんが料理をなさるのですか? 先ほどお嬢様と呼ばれていたと記憶しているのですが」
「お嬢様だろうと船長だろうと料理くらいしますよ。この船には何も出来ないお嬢様が乗る場所はありませんから」
昔、そんな風に言ってカルミアの存在を馬鹿にする人がいた。他でもないリデロだが。
(悔しくて悔しくて、必死になって魔法を勉強したのよね。おかげで今ではみんなの役に立てるような魔女になれたと思うわ)
「では私も手伝います」
カルミアは一瞬何を言われたのか理解出来なかった。リシャールの提案はそれほど信じられないものだ。
「いえ、リシャールさんはお客様です。きちんと食事代込の対価をいただきましたから、時間まで部屋でゆっくりしていて下さい。リデロに振り回されて疲れていると思いますし」
いくらなんでも幼いカルミアとリシャールは立場が違いすぎる。彼は正当なお客様だ。
リシャールが気負わずにいられるよう、客として当然の権利を並べてはみたが、決意は固いらしい。
「私が見ていたいのです。カルミアさんのご迷惑でなければ見学させていただけませんか?」
それがお客様の望みであるのなら、船長であるカルミアは出来る限り叶えたいと思っている。仕方なくカルミアは船の案内も含めてリシャールを調理場へと連れていくことにした。
船の調理場は特別広いとは言えないが、自由に動き回れるスペースは十分に確保されている。
調理をするための作業台はコンロと一体化した造りで、壁に組み込まれた棚には大量の皿が並んでいた。
部屋の中央には木製の大きなテーブルを置き、十人程が座れるようになっている。数人であれば作った料理をこの場で味わうことも出来る仕様だ。もっとも船員の数は何十人にも及ぶため、食事をするための場所が別に用意されている。
「何を作るのですか?」
カルミアの葛藤など知らず、リデロは上機嫌だ。まだメニューすら決まっていないのに、大好物が約束されているような喜びである。
見張り台に向かって小さくなる背中を見ていると、言いたいことは色々あるが、喜ばせてあげたいと思わずにはいられなかった。
「ではリシャールさん。私は昼食の支度がありますので、ここで失礼させていただきますね」
「カルミアさんが料理をなさるのですか? 先ほどお嬢様と呼ばれていたと記憶しているのですが」
「お嬢様だろうと船長だろうと料理くらいしますよ。この船には何も出来ないお嬢様が乗る場所はありませんから」
昔、そんな風に言ってカルミアの存在を馬鹿にする人がいた。他でもないリデロだが。
(悔しくて悔しくて、必死になって魔法を勉強したのよね。おかげで今ではみんなの役に立てるような魔女になれたと思うわ)
「では私も手伝います」
カルミアは一瞬何を言われたのか理解出来なかった。リシャールの提案はそれほど信じられないものだ。
「いえ、リシャールさんはお客様です。きちんと食事代込の対価をいただきましたから、時間まで部屋でゆっくりしていて下さい。リデロに振り回されて疲れていると思いますし」
いくらなんでも幼いカルミアとリシャールは立場が違いすぎる。彼は正当なお客様だ。
リシャールが気負わずにいられるよう、客として当然の権利を並べてはみたが、決意は固いらしい。
「私が見ていたいのです。カルミアさんのご迷惑でなければ見学させていただけませんか?」
それがお客様の望みであるのなら、船長であるカルミアは出来る限り叶えたいと思っている。仕方なくカルミアは船の案内も含めてリシャールを調理場へと連れていくことにした。
船の調理場は特別広いとは言えないが、自由に動き回れるスペースは十分に確保されている。
調理をするための作業台はコンロと一体化した造りで、壁に組み込まれた棚には大量の皿が並んでいた。
部屋の中央には木製の大きなテーブルを置き、十人程が座れるようになっている。数人であれば作った料理をこの場で味わうことも出来る仕様だ。もっとも船員の数は何十人にも及ぶため、食事をするための場所が別に用意されている。
「何を作るのですか?」


