しかしレインは肩を振るわせ残酷なまでに顔を歪める。心当たりがあると言うようなものだ。
「……そうよ。私、私が! でも、こんなことになるなんて、私が望んだのはカルミアを追い出すことだけ。リシャールだってこんなはずじゃ……」
「リシャールさんて、まさか私の名をかたったのも貴女!?」
レインはまるで悪役が浮かべるような笑みで答える。しかしカルミアの目には泣いているように映っていた。
「反対の感情を増幅させる薬……」
「反対?」
「反対の言葉を吐き、反対の行動を取らせる。なのにどうしてこんなことになっているの? だってリシャールは悪役なのよ。だから飲ませても問題ないはずなのに、どうして!?」
レインが空を仰ぐ。その先ではまた黒い竜が生まれていた。
「どうして邪悪が溢れ出すの!? どうしてカルミアが私を助けようとするの!? こんなのおかしい! まるでカルミアが正しいみたい……私はただ、カルミアを学園から追い出したかっただけなの!」
レインは諦めたように項垂れた。それは彼女の計画の失敗を意味しているのだろう。
「前に言いましたよね。本当はこんなところ来たくなかったって」
カルミアは頷く。レインと初めて出会った時、取り乱した彼女が話していたことを憶えていた。
「貴女には理解出来ないかもしれませんが、ここはゲームの、ある物語の舞台なんです。だから私はこれから先に起こる事を知っている」
カルミアは驚きながらもレインの言葉を受け止める。自分という例があるのなら、他にも転生者がいておかしくはない。それがこんなにも身近にいたというだけだ。
「私は物語の登場人物ではありません。だから物語にも、登場人物にも関わりたくないと思いました。巻き込まれて大変な目に合うのは嫌だから……。でも心のどこかでは否定している自分もいました。もしかしたら似ているだけの世界かもしれない、考え過ぎだって。同じようでいて少しだけ違っているんです。リシャールは別人で、悪役令嬢カルミアがいなかった」
静かに語り続けていたレインだが、ここで怒りに染まった瞳をカルミアに向ける。
「なのに貴女が現れた! あと一月だったのに、カルミアが現れて、私はやっぱりこの世界の運命から逃げられないと思った。逃げられないのなら立ち向かうしかないじゃない。カルミアが学園を支配する前に!」
「……そうよ。私、私が! でも、こんなことになるなんて、私が望んだのはカルミアを追い出すことだけ。リシャールだってこんなはずじゃ……」
「リシャールさんて、まさか私の名をかたったのも貴女!?」
レインはまるで悪役が浮かべるような笑みで答える。しかしカルミアの目には泣いているように映っていた。
「反対の感情を増幅させる薬……」
「反対?」
「反対の言葉を吐き、反対の行動を取らせる。なのにどうしてこんなことになっているの? だってリシャールは悪役なのよ。だから飲ませても問題ないはずなのに、どうして!?」
レインが空を仰ぐ。その先ではまた黒い竜が生まれていた。
「どうして邪悪が溢れ出すの!? どうしてカルミアが私を助けようとするの!? こんなのおかしい! まるでカルミアが正しいみたい……私はただ、カルミアを学園から追い出したかっただけなの!」
レインは諦めたように項垂れた。それは彼女の計画の失敗を意味しているのだろう。
「前に言いましたよね。本当はこんなところ来たくなかったって」
カルミアは頷く。レインと初めて出会った時、取り乱した彼女が話していたことを憶えていた。
「貴女には理解出来ないかもしれませんが、ここはゲームの、ある物語の舞台なんです。だから私はこれから先に起こる事を知っている」
カルミアは驚きながらもレインの言葉を受け止める。自分という例があるのなら、他にも転生者がいておかしくはない。それがこんなにも身近にいたというだけだ。
「私は物語の登場人物ではありません。だから物語にも、登場人物にも関わりたくないと思いました。巻き込まれて大変な目に合うのは嫌だから……。でも心のどこかでは否定している自分もいました。もしかしたら似ているだけの世界かもしれない、考え過ぎだって。同じようでいて少しだけ違っているんです。リシャールは別人で、悪役令嬢カルミアがいなかった」
静かに語り続けていたレインだが、ここで怒りに染まった瞳をカルミアに向ける。
「なのに貴女が現れた! あと一月だったのに、カルミアが現れて、私はやっぱりこの世界の運命から逃げられないと思った。逃げられないのなら立ち向かうしかないじゃない。カルミアが学園を支配する前に!」


