ドローナたちと別れたカルミアは礼拝堂を目指す。アレクシーネが封じる扉は礼拝堂の地下にあった。
竜の正体は邪悪な力だが、形を得る前はただの黒い霧にすぎない。その霧が溢れ出す入口を閉ざすことがカルミアに託された任務だ。
(急がないと!)
焦るカルミアの上空を竜が駆け抜ける。
途中、学生に出くわせば建物の中に避難するよう指示しながら夢中で走り抜けた。
礼拝堂への最短ルートである中庭を横断しようとすれば、地面に蹲る生徒の姿が目に入る。
「大丈夫!?」
放ってはおけないとそばに寄れば、それはカルミアも知る生徒だった。
「レインさん?」
肩を震わせ、自分を守るように両手で身体を抱きしめている。それでも止まない震えが彼女を支配していた。
呼びかけに気付いたレインは涙にぬれた瞳でカルミアを見上げる。
「カルミア……?」
竜に襲われた様子はないが、よほど怯えていたのだろう。大事に抱えてたはずの本は地面に散らばり、ノートやペンまで散乱している。
「立てる!?」
立ち上がることさえ困難に見えるレインに手を差し出す。
あれはアレクシーネに関わるすべてを憎んでいる。学園の生徒であるレインが標的にされる可能性もあるだろう。
けれどレインは差し出された手を目にした瞬間、激しい拒絶を見せた。
「違う、違うの! 私、こんなつもりじゃ……」
「落ち着いて、大丈夫だから。まずは建物の中に避難して」
「だめ、逃げられない。逃げる場所なんてどこにもない。誰も、運命からは逃げられない!」
必死の形相で訴えるレインは、カルミアへの言葉というより自分に言い聞かせているようだった。
空を駆ける竜のせいか、学園には強い風が吹き荒れている。
無機質にページを変えるノートに綴られた文字は丁寧なものだ。けれどそれは、どこかで見たことがあるような……。
散らばる本やノートに紛れて白い封筒が目に入る。
(でも、レインさんが……?)
まさかという可能性が浮かべば、心臓が嫌な音を立て始めた。もちろん彼女がそんなことをするとは思えない。けれどどうしても、異様なまでの怯えようが気にかかる。加えて先ほどの自分を責めるような発言だ。信じられないと思いながらもカルミアは問いかけずにはいられなかった。
「あの手紙はレインさん?」
心当たりがなければ伝わることもないだろう。違ったのなら追及する必要はないと信じて。
竜の正体は邪悪な力だが、形を得る前はただの黒い霧にすぎない。その霧が溢れ出す入口を閉ざすことがカルミアに託された任務だ。
(急がないと!)
焦るカルミアの上空を竜が駆け抜ける。
途中、学生に出くわせば建物の中に避難するよう指示しながら夢中で走り抜けた。
礼拝堂への最短ルートである中庭を横断しようとすれば、地面に蹲る生徒の姿が目に入る。
「大丈夫!?」
放ってはおけないとそばに寄れば、それはカルミアも知る生徒だった。
「レインさん?」
肩を震わせ、自分を守るように両手で身体を抱きしめている。それでも止まない震えが彼女を支配していた。
呼びかけに気付いたレインは涙にぬれた瞳でカルミアを見上げる。
「カルミア……?」
竜に襲われた様子はないが、よほど怯えていたのだろう。大事に抱えてたはずの本は地面に散らばり、ノートやペンまで散乱している。
「立てる!?」
立ち上がることさえ困難に見えるレインに手を差し出す。
あれはアレクシーネに関わるすべてを憎んでいる。学園の生徒であるレインが標的にされる可能性もあるだろう。
けれどレインは差し出された手を目にした瞬間、激しい拒絶を見せた。
「違う、違うの! 私、こんなつもりじゃ……」
「落ち着いて、大丈夫だから。まずは建物の中に避難して」
「だめ、逃げられない。逃げる場所なんてどこにもない。誰も、運命からは逃げられない!」
必死の形相で訴えるレインは、カルミアへの言葉というより自分に言い聞かせているようだった。
空を駆ける竜のせいか、学園には強い風が吹き荒れている。
無機質にページを変えるノートに綴られた文字は丁寧なものだ。けれどそれは、どこかで見たことがあるような……。
散らばる本やノートに紛れて白い封筒が目に入る。
(でも、レインさんが……?)
まさかという可能性が浮かべば、心臓が嫌な音を立て始めた。もちろん彼女がそんなことをするとは思えない。けれどどうしても、異様なまでの怯えようが気にかかる。加えて先ほどの自分を責めるような発言だ。信じられないと思いながらもカルミアは問いかけずにはいられなかった。
「あの手紙はレインさん?」
心当たりがなければ伝わることもないだろう。違ったのなら追及する必要はないと信じて。


