寒いな…

真冬生まれの林檎は悴んだ指先を擦り合わせた。
末端冷え性の手先で暖をとれるとは思っていない。20年生きてきた中で習得した無駄な癖の1つだ。
喜怒哀楽の表現が乏しい顔面をしかめる程、林檎は冷たい風が大嫌いだった。
一刻もはやく自宅の扉を開けるべく、バイトで疲れた脚をはやらせた。