【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。




1年生のフロアは1階だから遠いなあ……。
でも、早く戻らないと。


少し息を切らせながらサッサと階段を駆け下りる。


「あ! 待って!」


必死に階段を下りていると、2階のフロアを通過するときにそんな声が聞こえて立ち止まる。


見ると、そこにはさっきぶつかってしまったサッカー部の先輩がいた。


「あ……あの……っ」


さっきのこと、謝らなくちゃ……!


「さっきはすみませんでした……っ!」


「それはもう、気にしなくていいよ。俺も悪かったし」


「すみません……」


はぁ……いくら男の子が苦手だからって逃げるなんて本当に最低だよね、私。


「キミ、名前は?」


「え……?」


まさか名前を聞かれるなんて思ってもいなかったから、焦る。


「名前。聞いてもいい?」


「え、えっと……ち、千葉羽音、です」


震える声で名前を言うと、先輩はふわっと優しい笑顔を見せてくれた。


「俺は神楽(かぐら)大和(やまと)。よろしく」


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


私、顔赤くなってないかな……?
はあ……心臓がつぶされそうなぐらいドキドキしてる。