【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。




さて、お邪魔虫はこの辺で退散しないと……と、方向転換してそーっと教室に帰ろうとしたときだった。


「伊織ー! 一つ言い忘れてたんだけど……うわあ!」


「きゃ!」


ちょうど曲がり角から誰かがきて正面衝突してしまい、私はそのまま尻もちをついた。


「いてて……」


「ごめん! 大丈夫? 怪我とかしてない?」


優しい声がして顔をあげるとそこには、心配そうに私を見つめて手を差し出してくる明るい茶髪の男の子。


この人、すごくイケメンだ……。


……って、そうじゃなくて!


「だ、大丈夫です! すすす、すみません……!」


男の子が苦手な私は自力でサッサと立ち上がって、噛みながら必死に頭を下げる。


そのときに視界に入ったのは上靴。
この人の上靴、赤色ってことは……2年生!?
ということは先輩だ……!


私たちの学校には学年カラーがあって、今の1年生は青色、2年生が赤色、3年生が緑色。
上靴と体操服はその学年カラーになっている。


「俺も、ちゃんと前見てなかったから……ごめんね?」


「いやいや、あの、本当に私が前方不注意で……! え、えっと、ご、ごめんなさい……!」


あぁ……ダメだ。
やっぱり男の子の前だと上手く話せない。