【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。




「おはよ、羽音」


登校してきた初花が私の前の席に後ろ向きに座る。


「おはよう」


「なんか顔、赤くない?」


「え!?」


「まあ、大好きな彼氏と登校できたらそりゃ幸せだよね〜」


羨ましいな〜とニヤニヤする初花。
そんな初花に隣の席の黒澤くんを横目に見ながら、ま、まあね……と答える。


「そ、そういう初花はサッカー部の人はどうなったの?」


私が質問した瞬間、初花の目がキラキラと輝く。


「そうそう! 実はその人と次の日曜日にデートの約束しちゃった!」


「えー! よかったね! どこ行くの?」


「えへへ、それは今日の昼休みに決めるんだぁ」


「いいなあ」


本当だったら私も今頃、初花みたいに普通の恋をして、一緒にお弁当食べたり、休みの日にはデートとかしたりしてたはずなのになあ……。


初花が本当に羨ましい。


「なに言ってんの! 羽音だってデートぐらいするでしょ?」


「えっと……う、うん」


デート……らしいことは黒澤くんに仕返ししようと企んでいた放課後に1回しかしてない。


なんて、考えながら隣の黒澤くんの方をチラッと見ると聞いてない様子でホッとする。


まあ、別に黒澤くんにデートなんぞしてもらわなくても結構だけど!