【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。




『――2番ホームに停車中の列車、まもなく発射いたします』


私の家の最寄り駅の改札を抜けて、電車に乗り込む。


――ガタンゴトン。


あぁ、満員電車苦しい……。
押しつぶされそうだよ。


ドア近くの手すりを持って、なんとかバランスを保つ。


そのときだった。


――グラッ。


電車が揺れてバランスを崩してしまう。


……そのせいで、黒澤くんの胸に飛びついてしまった。


わ、私ってばなにして……!


「ご、ごめ……」


「いいよ、そのままで。危ないから」


狭い空間の中、慌てて離れようとしたけど、黒澤くんに抱き寄せられる。


ち、近い。
近すぎる……っ!


「いや、いいよ!」


「羽音、あんまり動いたら他の人の邪魔になるから大人しくしてて」


「……っ」


そう言われてしまうと言い返せない。


「よしよし、偉いね」


子どもを褒めるように私の頭をポンポンと撫でる黒澤くん。
私……黒澤くんにされるがままだ……。