「でもいいや、羽音のお母さまに彼氏って認めてもらえたから」
「いやいや、私は認めてないよ!」
私は好きで黒澤くんの彼女やってるワケじゃないんだもん!
「でも、羽音は俺の彼女でしょ?」
「……っ」
はぁ~……本当に悔しい。
なんでこんなキライな人と私は付き合っているんだろう……。
しかも初めての彼氏がキライな人って……そんな人、世の中に私ぐらいじゃない?
「その不服そうな顔、かーわい」
あぁ、ダメだ。
この人には敵わない。
抵抗するだけ無駄なのがわかる。
「おーい、なにか言ってよ」
「……うん」
「うん、じゃなくて!」
「だって、なに言っていいのかわかんないんだもん」
可愛い可愛いって……一日に何回言うの?
゛可愛い“なんて今までこんなに言われたことないから、なんと返していいのかわからない。
というか、黒澤くんの言葉を素直に受け取れない。
絶対に私のことバカにしてるもん。
「俺、何回も言ってるけど思ったこと言ってるだけだから」
だから、その言葉が信じられないんだってば! とは言えない。
「だから、安心してね」
いや、安心できない。
信じたら私は終わりだ。
黒澤くんにまた騙されたことになる。



