「どうしたの、羽音。そんな暗い顔して」
「いや……別に。まだちょっと眠たいだけ」
なんて、ウソをついてごまかす。
「ていうか、黒澤くん迎えにくるのはやくない!?」
「だって、羽音となるべく早く会いたいんだもん」
「……っ」
ほら、また朝からそういうことをサラッと言っちゃうんだから……。
なにも言えなくなって目をそらす。
「あ、羽音顔赤くなってない?」
「な、なってないよっ!」
「えー? 俺には赤く見えるけどなぁ」
顔を覗き込もうとしてくる黒澤くんの顔にカバンを押し付ける。
「なにするのー……まぁ、可愛いから許すけどさ」
はぁ、思ってもないくせに……。
まあいいや、スルーしよう。
「そういえば、羽音のお母さん、俺の存在知っててくれたんだね」
嬉しそうにニヤニヤする黒澤くん。
ほら、絶対あとでなにか言われると思った……予想通りだ。
「やっぱり、羽音は俺のことが大好きだったんだね」
「それは、過去の話で……」
「今は大キライだけど、って?」
「……うん」
「そうやって平然と認められると傷つくなぁ」
そう言いながらもニコニコしている黒澤くんは絶対におかしい。



