「うん、って全然わかってないくせに」
「いたっ」
あはは、と笑いながら私にデコピンをする。
「もう、なにするの……」
オデコをおさえながら黒澤くんを睨む。
「わ、羽音って怒っても可愛い」
ニコニコと微笑みながら平気で゛可愛い”と言う黒澤くんに私は動揺する。
「なっ、なに意味わからないこと言ってるの?」
「意味わからないことはないでしょ。思ったことを言ってるだけなんだもん」
「だからその゛可愛い”とか……なんで私に言うの?」
「だって……羽音、可愛いもん」
「へ……?」
急に立ち止まって、真剣な表情で見つめてくるからなにも言えなくなる。
「可愛いから可愛いって言ってるの。間違ってる?」
「あ……いや」
「でしょ? 羽音は昔から可愛かったけど、でも……少し見ない間にもっと可愛くなった」
そう言いながら私の頬に手を添える。
「だから、俺……羽音が他の男にとられないか、すっごく心配」
「……っ」
あぁ……もう心臓が爆発しそう。
大キライな黒澤くんにこんなにも胸がドキドキしちゃうなんて、本当にどうかしてるよ私。
少しでも、黒澤くんの言葉に惑わされている自分が悔しい。
もしかして、私のこと好きなのかなって、少し嬉しいだなんて思ってしまう自分の頭を叩きたい。