私を抱き締める腕の強さが少し緩くなり、黒澤くんの顔を見上げる。
「く、黒澤くん……っ?」
黒澤くんは今まで見たことのないほど、真っ赤になっていた。
「こら、見ちゃダメだって……っ」
恥ずかしそうに私の目を手で隠す。
「黒澤くん、熱でもあるんじゃ……」
「ない! 絶対ないから大丈夫!」
「そ、そっか……ならいいんだけど」
「そ、そろそろ帰るか」
「あ、う、うん」
カバンを持って職員室に教室の鍵を返すと、学校を後にした。
私と黒澤くんの間には沈黙が漂う。
…………なんだか少し気まずい。
あぁ、なんで私ハグなんてしてしまったんだろう。
ほぼ無意識だったんだ。
とりあえず、謝ったほうがいいかな……?
意を決して口を開く。
「あの……さっきはいきなり抱きしめて、ごめんね。その、深い意味とかないから!」
あははと笑いながら話してみる。
「……そっか。でも、嬉しかったよ」
「え……?」
「あんなこと、他の男には絶対しないでね」
「う、うん」
まさかそんなことを言われるとは思わなくて、動揺する。
だめ、心臓がドキドキしてる。
私、おかしいんじゃない?