でも今なら――
気がつけば私は黒澤くんをギュッと抱きしめていた。
程よく筋肉のついたカラダは女の子とはまた違って固い。
これが、男の子なんだ……。
「……ちょ、羽音」
少し余裕のない黒澤くんの声にハッと我に返る。
「ご、ごめん! 私ってばなにして……っ」
は、恥ずかしすぎる……。
穴があったら入りたい……なにやってんの、私のバカ!
慌てて離れようとすると、手首を掴まれた。
「離れんな」
「え……?」
そのまま手首をひかれたかと思うと、私は彼の胸の中にいた。
「あのさ」
少し沈黙が続いた後、黒澤くんが口を開いた。
黒澤くんの胸の中にいるっていうことだけで、私は頭がいっぱいだった。
「なんでそういう可愛いことすんの」
「……へ」
い、いま、黒澤くんなんて……。
「お願いだから急にそういう可愛いことするの勘弁して」
顔を胸に押し付けられているから黒澤くんの表情がわからない。
私のこと可愛いって……言った?
これは幻?



