そんなある日の帰り道。
立ち寄った公園のベンチに腰をかけて他愛ない話をしているときに、急に発した言葉。
「俺……羽音のことが、好き」
「え……!?」
時が止まったような感覚に襲われた。
まさか、彼の口からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったから。
「ごめん、いきなりこんなこと言って……困らせた、よな」
少し笑いながら自分の髪をくしゃっと触る彼に、嬉しさがこみあげてきた。
「ううん、困ってなんかないよ。私も……黒澤くんのことが好き、だよ」
気づいたら口からこぼれた“好き”という言葉。
「マジで!? ヤバい、めちゃくちゃ嬉しい……!」
「えへへ、私も」
私と黒澤くんは両想いだったんだ。
でもあの頃の私たちはまだ中学1年生だったから、付き合うとかそんなのはなくて……。
ただ、ずっと一緒にいた。
一緒に帰ったり、放課後はたまに寄り道したり……。
それだけで十分だったんだ。



