電車に乗って、学校の最寄り駅で降りると同じ制服をきた生徒たちからの視線がすごい。
あ、歩きづらい……。
みんなしてそんなにこっち見ないでよ……。
たぶん、見られてるのは私じゃなくて、黒澤くんだと思うけど。
だって悔しいけどスタイルいいし、顔だってカッコいいし、目立つんだもん。
「ねぇねぇ、あれって1年の黒澤昴くんじゃない?」
「ほんとだー! ウワサには聞いてたけど、めちゃくちゃカッコいい……」
「隣にいるのって彼女かな? ざんねーん……」
女の子たちのそんな会話が聞こえてきてビクビクする。
すみませんすみませんすみません。
こんな凡人がこのビジュアル完璧の黒澤くんの彼女(仮)で。
私だって付き合いたくて付き合ってるんじゃないんだよ。
この人に脅されてるんです……!
……なんて、言えないし。
あぁ、みんなの視線が怖いよ~……。
「羽音、顔がこわばってるよ? 堂々としてればいいんだって」
そんなこと言われたって……こんなに注目を浴びたこと、人生で一度もないんだもん。
こんなことになっちゃったのは、黒澤くんのせい……でもあるけど、自分のせいでもある。
あぁ、神様。
お願いだから1日だけ時間を戻してください。
……なんて願っても無駄だよね。