「俺は羽音以外とは付き合う気が全くないってこと。わかる?」
「へ……?」
「羽音の王子様にふさわしいのは、俺だけだと思うんだよね」
頭の中が真っ白な私は返す言葉も思いつかない。
呆然と立ち尽くす私の腕を引き、黒澤くんは私を抱きしめた。
「ちょ、黒澤く……っ」
「やっと、捕まえた」
私の視界に広がるのは黒澤くんの胸だけで、彼の表情は全く見えない。
一体、何を考えているの?
なんで私、抱きしめられているの?
「あ、あのっ」
「なに?」
「え、いや……」
黒澤くんの懐かしい匂い。
あぁ、そうだ。
少し甘くて爽やかなこの匂いがすごく懐かしい。
「大人しく俺の彼女でいてくれたら、それでいいから」
「どうして……」
「もう、質問するのナシね。キリがないから」
どうして私じゃないとダメなの?
そう聞こうとしたら遮られてしまい、私は黙り込む。
「それと……もし、俺に逆らったら……わかるよね?」
「へ……っ?」
「中学のときのこと、みんなにバラすから」
整った顔に似合わない、不敵な笑みを浮かべる。