「羽音は……俺のこと好き?」


手首を掴むと、顔を近づけて聞いてくる。
恥ずかしくて黒澤くんの目を見ることができない。


「き、嫌い……大キライっ……!」


俯きながら必死に答える。


「そっか」


あっさり私から離れると、ニコッと笑ってみせた。


「そんなに好きなヤツと付き合いたいんだったら、今から俺を好きになればいいじゃん」


「なに、それ」


なにその理不尽な考え方!
黒澤くんは色々理不尽すぎる。


黒澤くんをまた好きになるなんて、そんなの……できるはずない。


「それに、他の男とわざわざ関わらなくても、俺だけに慣れてれば十分」


「……っ」


平然とそういうこと言うなんて、ズルい。
少しドキッとしてしまった自分の頭を叩きたい。


「もう絶対に逃がさないから。覚悟して?」


真剣なその瞳に思わず息をのむ。


すると、黒澤くんは私に手を伸ばして髪の毛に指を通す。


「く、黒澤く……っ」


「ん」


「黒澤くんの彼女なら……私じゃなくてもいいんじゃない?」


「まだそんなこと言うの」


呆れたように小さくため息をつくと、私の目線に合わせてかがむ。