それにしても、もう彼は忘れてしまったんだ。
私のことなんて。
よかった、と思う反面、少し寂しいし悔しい。
私だけが過去に取り残されたような気分だ。
私と彼が出会ったのはちょうど、中学1年生の今日みたいな桜のキレイな春だった。
黒澤くんとは中学に入学したときに、隣の席で仲良くなった。
内気であまり自分から話せない地味な私と、カッコよくてみんなの人気者の黒澤くん。
全く正反対だったけど、黒澤くんは私にも分け隔てなく話しかけてくれた。
それがすごく不思議だったけど、私は彼に惹かれていった。
「羽音、その……今日部活ないんだけど、一緒に帰ろ?」
「……うん!」
黒澤くんが部活がない日は一緒に帰っていて、付き合ってるんじゃないかって冷やかされることも少なくなかった。
いくら冷やかされても『気にすんなよ』って一緒に帰るのをやめなかった。
優しくていつも笑顔で……でも少し不器用な黒澤くんが好きだった。



