「昔からソフトクリーム大好きだったもんな? それに、バニラ味」
「……えっ」
黒澤くんの言葉に私は全身が一気に凍ったみたいに動けなくなる。
……ウソ。
ウソでしょ?
今、昔からって……。
「な、羽音?」
聞き覚えのある私を呼ぶ声におそるおそる、振り返る。
そこにはさっきまで優しかった黒澤くんには似合わない、不敵な笑みを浮かべていた。
「俺が気付かないとでも思った?」
まさか気づいてたから、私に『バニラ味でいい?』って聞いてきたの……?
普通、好きな味知らなかったら、どれがいい?って聞くはずだもんね。
いやいや、これはきっと夢だ。
悪い夢を見ているだけだ。
私はなにも言わず、その場を離れようと歩き出した。
……が、しっかり黒澤くんが私の腕を掴んだ。
黒澤くんの手の感触が現実なんだと教えてくれる。
「や……っ、離してっ!」
腕を振りほどこうとしても全く離してくれない。
「もう、俺から逃げられねーよ」
そのまま腕を引き、にやりと笑ってすぐにキスできそうな距離までグッと顔を近づけてくる。
「や……っヤダ、別れる!」
「却下」
あぁ、最悪だ。
なんでこんなことに……なっちゃったの?



