【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。



「……美味しい」


ほどよい甘さのバニラ味に思わず笑顔がこぼれる。


「ここのハンバーガーショップのソフトクリーム、昔から好きなんだよね」


黒澤くんの言葉に私はあることを思い出した。


……え、ちょっと待って。
ここのハンバーガーショップって……。


中学の頃、黒澤くんとたまに行ってたハンバーガーショップの別店舗じゃ……。


少しヒヤッとしながら黒澤くんの方を見ると、ニヤッという言葉が似合う笑顔を浮かべた。



いや、そんなまさか。
黒澤くんが思い出したなんてそんなこと……ないよね。


「そ、そうなんだ」


あはは、と笑いながら黒澤くんから目をそらして、ソフトクリームにまた口をつける。


平然を装うけど、内心焦りが止まらない。


どうしよう、もし仮にも気付かれていたら。
いやいやいや。
黒澤くんはもう私のことなんて忘れた。
うん、忘れたに決まってる。


自分に言い聞かせながらソフトクリームを完食すると、立ち上がった。


「あー、美味しかった! さ、そろそろ帰ろう!」


これ以上一緒にいたらなにかやらかしそうだ。
家に帰って心を落ち着かせよう……。


と、そのときだった。