【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。



「私も」


桜の木を見上げる黒澤くんの横顔があの頃の黒澤くんに重なる。


って、ダメダメ。
黒澤くんはもう、優しい頃の黒澤くんじゃないんだから。
というか最初っから、黒澤くんは優しくなんてなかったんだ。


ただ、優しい“フリ”をしていただけだったんだ。


「行くか」


「そうだね」


自転車を押す黒澤くんと肩を並べて、駅前へと向かった。


駅前の駐輪場に自転車を置くと、散った桜で敷き詰められたピンク色の道を歩き始めた。


「あ! この店入ってもいい?」


雰囲気が可愛い雑貨屋さんが目に入り、黒澤くんに聞いてみる。


すると黒澤くんはふわっと笑って、コクリと頷く。


「わぁ、このネックレスめちゃくちゃ可愛い! 欲しいなぁ」


手に取ったのはハートのシンプルなネックレス。
値段は……って、2500円もするの!?
今手持ちないし……諦めるしかない。

手に取ったネックレスを元の場所に戻す。


「さ、出よう」


「もういいのか?」


「あー、うん! 次、どこ行く?」


雑貨屋さんを出て、黒澤くんに笑顔で問いかける。