「何にも面白いものないでしょ」
「ううん……黒澤くんのおうちに来られて嬉しいし、こうやって家でゆっくりするのもいいよね」
ああ、なんて良い子なんだろうか。
本当は遊園地に行きたかったはずなのに……。
「だって、人目気にしなくていいんだもん」
「そうだね」
それは確かにそうだ。
家の方がゆっくり話せるし。
ゴロゴロしてても誰か見てるワケでもないし。
「黒澤くんは……?」
「え?」
「黒澤くんは、女の子の部屋……行ったことあるの?」
「……羽音と、穂乃の部屋には小さい頃たまに行ってたかな」
穂乃の名前を聞いた瞬間、しゅんとした表情になる。
「そっかあ……」
「羽音、嫉妬してるの?」
「うん……」
嫉妬なんてする必要ないぐらい、俺は羽音しか見えていないのに。
全く、手がかかるんだから……。
「私は何もかも初めてなのに、黒澤くんは違う……」
「何言ってんの。俺だってこんなに人を好きになったのは初めてだよ」
俺は今まで恋なんてしなかった。
羽音に出会うまでは。
こんなにも人を愛おしい、欲しい、自分のものにしたいと思ったのは初めてだ。



