「……腕組まれるの、イヤ?」
計算なのか無自覚なのか、潤んだ瞳で上目遣いする羽音はほんとにズルい。
そんなの、イヤじゃないに決まってる。
むしろ嬉しいでしかない。
ここは俺が理性と戦うしかない。
羽音の希望は何でも叶えてあげたいから……。
「ううん、嬉しいよ」
ニッコリ笑って平然とそう答える自分を褒め称えたい。
「よかった」
満足気に笑って更に腕を組む力を強める。
よし……家までのガマン。
家までのガマンだ。
俺は心の中を無にして、家まで必死に耐えた。
我ながらすごいと思う。
この生殺し状態に勝つなんて。
俺の心の中の全世界が大喝采だ。



