「はあ……可愛いな、もう」
ため息をつきながら頭を抱える黒澤くん。
「そんなに甘やかされたら、私ダメ人間になりそう……」
黒澤くんがいないとなにも出来なくなりそうだ。
「いいよ、それで」
「えっ?」
「俺がいないと困るぐらい、ダメになっていいよ」
またまたそうやって甘やかすんだから。
「羽音がしてほしいことは、何でもしてあげたいし、行きたいところには連れていってあげたい。食べたいものは食べさせてあげたいし。とことん、俺に甘えてほしい」
「もう……十分甘やかされてるよ」
「いや……もっともっと、俺に甘えて?」
あぁ……やっぱり私は黒澤くんが好きだ。
優しい目で私を見つめる彼が愛おしくて、私は彼をぎゅっと前から抱きしめた。
「……好き」
「……っはあ、そういう不意打ちやめてってば。人がせっかくガマンしようとしてるのに」
「ガマンなんて、しなくていいのに」
私はこれだけ甘やかされてるのに、黒澤くんにガマンなんてさせたくない。
「……ダメ、これ以上くっついてたら俺がダメになる」
私から体を離そうとする黒澤くんを離れないようにぎゅっと抱きしめる。



