【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。



――ガラガラ。


保健室の扉の開く音がして、黒澤くんは慌ててベッドの横のイスに座る。


「千葉さん、目は覚めた?」


カーテンが開き、保健室の先生が顔を覗かせる。


「……はい、すみません」


「寝不足はお肌にも悪いわよ?」


「気をつけます……」


今日からはよく眠れそうだ……。


「どうする? もう少し休む? もうすぐ1時間目終わるけど」


「……え!?」


もうそんな時間!?


「黒澤くん、授業出なくてよかったの……?」


「私も出なさいよって言ったんだけど、心配だからって聞かなくて」


ウフフ、と笑う先生。


「黒澤くん……」


そんなに私のこと心配してくれてたんだ。
優しすぎるよ……。


「いいの、羽音のためなら」


優しく微笑む彼に、また愛しさがこみ上げてきた。


「あらあら、青春ね……羨ましい」


これって……青春なのかな。
私が夢に描いた……青春。


今私は、青春してるんだ。