「ここ、はねてる」


そう言って、私の頭にポンと触れた黒澤くん。
その瞬間、私の全身は熱を帯びていく。


く、く、黒澤くんが!


わ、わ、わ、私の頭に触れてる……っ!


「こ、ここかぁ! あ、あとで学校ついたら直さなきゃ!えへへ……」


反射的に黒澤くんから離れて笑ってごまかす。


び、ビックリしたぁ~……。
って、私ってば意識しすぎ!
私が黒澤くんに振り回されてどうすんの!


首をブンブン振って、心を落ち着かせる。


「あはは……っ、千葉さん、さっきからくるくる表情が変わって面白い」


「へ……!?」


う、ウソ、顔に出てた!?
は、恥ずかしすぎる……。


「そ、そういえば黒澤くんって電車通学なんだね」


「あぁ、今日は寝坊しちゃってさ。ほんとは自転車なんだけど、今日だけ電車なんだ」


「そうなんだ! 学校生活2日目から寝坊って……お互い、ビックリだね」


じゃあ今日はレアだ!
一緒の電車に乗れるなんて!
でも……普通に話すことしかできない私。
こんなんで仕返しなんてできるのかなぁ……。


学校の最寄り駅で降りると、私と黒澤くんは自然と2人で通学路を歩き始めた。


よしよし、いいぞ。
アピールするチャンスだ。


「きょ、今日もいい天気だね!」


「あぁ、そうだね」


……ダメ。
会話続かない……はぁ。

コミュニケーション能力が欲しい。切実に。