「羽音、おはよ!……って、顔色悪くない?」
教室に入った私の顔を見るなり、驚いた表情をする。
「はぁっ……はぁ……っ、ちょっと早歩きしたからかな?」
日頃の運動不足のせいかな……。
私、運動は昔から苦手なんだもん。
「しかも、どうしたのよそれ!」
膝から流れた血をみてギョッとする。
「さっきコケちゃって……あはは」
きっとコケたのも運動不足のせいだ。
笑ってるけど、結構痛い。
はやく保健室行って手当してもらおう。
「あはは、じゃないよ! 保健室行ってきな?」
「うん、じゃあ行ってくるね」
カバンを机の上に置いて、教室を出る。
予鈴まであんまり時間ないから急がないと!
走ろうと右足を一歩踏み出したときだった。
――ふらっ。
あれ? 何か目の前がボヤッと……して、よく見えない……な。
そうかと思えば、私の体は思いっきり傾いて地面に向かって倒れていく。
「――羽音! しっかりしろ!」
この声は黒澤くん………?
そんなワケないか。
幻聴が聞こえるなんて、私ってどんだけ黒澤くんが好きなの。
そこからは視界も真っ暗になり、私は意識を手放した。