「じゃあ……もう黒澤は諦めるってこと?」
「うん……そうする」
黒澤くんはやっぱり私の運命の王子様なんかじゃなかったんだ。
だから結ばれなかったに違いない。
「……そっか」
「ごめんね、初花」
駅に着いて改札を通り、電車に乗る。
『――まもなく、○○駅○○駅に列車が到着します』
「じゃあ……また来週」
「うん、またね。羽音」
学校の最寄り駅に着き、そんなアナウンスが聞こえて慌てて初花に手を振る。
それから自分の最寄り駅につくと、電車を降りて一人で家の方へ歩き出す。
「はぁ……」
一体、今日一日で何回ため息をついただろう。
ため息をつくと幸せが逃げるなんて言うけど、逃げる幸せも今の私にはない。
一人になってまた、さっきの黒澤くんと浪平さんを思い出して立ち止まる。
頭からこびりついて離れてくれないんだ。
胸が……胸が苦しいよ。
あーダメ、また泣きそうになる。
グッと涙をこらえて、再び歩き出した。



