黒澤くん……好き。

あぁ、やっぱり好き。


『大丈夫?』


ドジな私に優しく差し出してくれる手も、


『ウソだよ、バーカ』


少しイジワルなところも、


『一緒に帰ろ』


無邪気で元気な笑顔も。



全部、大好きだったんだ。



黒澤くん……黒澤くん……っ!


―――――
――――
―――


「……ん! はーのーん!」


「……ん?」


「遅刻するわよ?」


うっすら目を開けると、そこにはエプロンをつけたお母さんがいた。


「……朝!?」



慌てて体を起こして時計を見ると、次の電車まで20分しかなかった。


やばい、遅刻だーっ!!


朝ごはんも食べず、慌てて制服を着て家を飛び出す。


「はぁ……っはぁ……っ」


あー、もう!
高校生活2日目から遅刻は絶対にヤダ!


『3番ホームの列車のドアが閉まります。ご注意ください―――』


ひゃあああ!
ドアが閉まっちゃう!


私は思い切って電車に飛び込んだ。


「はぁ……」


ギリギリのところでなんとか電車に乗ることができた。


危ない危ない。
遅刻するところだった。
この次の電車だとHRに間に合わないもん。


「千葉さん、危なかったね」


呼吸を整えていると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
顔をあげるとそこには……。


「く、黒澤くん」


爽やかな笑顔の黒澤くんがいた。


そういえば今朝、中学の入学式のときの……。
あれは夢、だったんだよね?
まさか、私が黒澤くんを好きになった、入学式の夢を見るなんて。