「はぁ……はぁっ……は、羽音?」
追いついてきた初花が息を切らせて肩を叩いてくる。
「ごめん、初花」
「さっきの女の子……誰なの?」
「あの子が今朝話した……浪平さん、だよ」
「あぁ……! 黒澤の幼なじみの……っ」
なるほどね、と初花が頷く。
「あの浪平さん? って子、怪しいわね……」
「え?」
「だって、羽音には黒澤は女遊び激しいから今回の羽音に対する好意もただの遊び、とか言ってるクセに自分はあんなに黒澤とベタベタしてるんでしょ?」
確かに……言われてみればそうだけど。
「それは幼なじみだから……仲良しなだけじゃないのかな?」
「うーん……それに、私は中学のとき転校してきてから2年間ずっと同じクラスだったけど……黒澤が女遊びするなんてそんな風にはとても思えなかったよ? 他で女の子がいるなんてそんなのも聞いたことないし」
初花が話す黒澤くんと、浪平さんの話す黒澤くんは全く違う。
どれが本当の黒澤くん……?



