「HRは以上でおわり。かいさーん」
担任が教室を出ていき、みんな一斉に机を移動させる。
さようなら……黒澤くんと、隣同士の席。
心の中で小さく呟いて窓側の一番後ろの席に移動する。
「ふぅ……」
席に着くと、初花が私の席にやってきた。
「やっぱこの席いいなー」
「一番前って大変だね」
「ほんとだよ〜……授業中に居眠りできないじゃん……」
拗ねたように口をとがらせる初花が面白くて、思わず笑ってしまう。
「ていうか、黒澤いないね」
「うん……今朝、確かに電車で見たのになぁ」
「まあもう、黒澤のことは徐々に忘れよ?」
「そうだね」
忘れたら少しはラクになる。
きっと思い出に変わっていつか思い出して笑える日がくるはず。
だから……少しずつ忘れなきゃ。