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――――
―――
『さて、みなさんの机には教科書が置いてあると思います。これが今日からみなさんが使う、教科書です。なくさないように、名前を書きましょう』
桜の舞う、入学式。
担任の先生の声でみんな筆箱から油性ペンを取り出して、教科書に名前を書き始める。
……もちろん、私も。
『なぁなぁ』
名前を書いていると、隣の席の男の子に声をかけられた。
『油性ペン、忘れちゃったから後で貸してくんない?』
申し訳なさそうに手を合わせてお願いしてきた男の子。
『う、うんっ!』
慌てて名前を書くと、男の子に油性ペンを手渡す。
『さんきゅ! すぐに返すから!』
そのときの男の子の笑顔に私の胸は撃ち抜かれたようだった。
初めて知った感情。
今思えば、あれは一目ぼれだった。
『ありがと、助かった。ところで、名前は?』
『千葉羽音……』
『羽音な! 俺は黒澤昴。よろしくな、羽音』
男の子……黒澤くんに差し出された手。
私は少し照れながら、その手に自分の手を重ねた。
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『さて、みなさんの机には教科書が置いてあると思います。これが今日からみなさんが使う、教科書です。なくさないように、名前を書きましょう』
桜の舞う、入学式。
担任の先生の声でみんな筆箱から油性ペンを取り出して、教科書に名前を書き始める。
……もちろん、私も。
『なぁなぁ』
名前を書いていると、隣の席の男の子に声をかけられた。
『油性ペン、忘れちゃったから後で貸してくんない?』
申し訳なさそうに手を合わせてお願いしてきた男の子。
『う、うんっ!』
慌てて名前を書くと、男の子に油性ペンを手渡す。
『さんきゅ! すぐに返すから!』
そのときの男の子の笑顔に私の胸は撃ち抜かれたようだった。
初めて知った感情。
今思えば、あれは一目ぼれだった。
『ありがと、助かった。ところで、名前は?』
『千葉羽音……』
『羽音な! 俺は黒澤昴。よろしくな、羽音』
男の子……黒澤くんに差し出された手。
私は少し照れながら、その手に自分の手を重ねた。