【完】溺愛プリンスに捕まってしまいました。



「…………」


少し考えた私は意を決して《応答》を押した。


「も、もしもし……」


『もしもし、羽音。何してた? あ、もしかしてテレビの邪魔だった?』


いつも通り、変わらない黒澤くん。
当たり前なんだけど、ね。


「あぁ、いや……テレビはまだこのあとからなの」


なんて、テキトーに流す。


『そっか。どうしても、羽音の声が聞きたくなって……ごめんね?』


その言葉も……ウソ、なんだよね?
私の声を聞きたいだなんてほんとは微塵も思ってないんだよね?


「う、うん……」


あぁ、言わなくちゃ。
後戻りできなくなる前に……言わなくちゃダメなんだ。


『羽音、どうかした? 調子でも悪いの?』


声だけで様子が違うってわかってしまう黒澤くん。
すごいなあ……。
やっぱり今まで色んな女の子を扱ってきたから?