図書室に残された私と黒澤くんの間には沈黙が漂う。
なにか……なにか言わなくちゃ。
「あ、あの」
「羽音……俺、死ぬかと思った」
気が抜けたようにその場にしゃがみこむ。
「え……」
「羽音がアイツに触れられたって考えただけで気が狂いそう……」
「だ、大丈夫だよ! なにもされてないから……」
あと少し、黒澤くんがくるのが遅かったら……って考えるだけでゾッとする。
「羽音、なんでウソついたの」
「え……?」
「昨日、スマホ持って帰ってなかったでしょ。俺、昨日の夜メッセージ送ったのに既読すらつかないし」
そう言われて慌ててスマホの通知を確認すると、黒澤くんからのメッセージが入っていた。
「あ、ほんとだ……」
「もうすぐチャイム鳴るのに全然羽音帰ってこないし、松下さんにどこか知らないかって聞いたら図書室って言ってたから……」
「初花が……?」
黒澤くんは私の頬に手を添えて、涙をぬぐう。
「羽音……怖かったよね……」
「うん……っ大丈夫だよ……黒澤くんが来てくれてなかったら私……」
絶対に、無事じゃなかった。
どうなってたか、わからない。



